本当は怖い歯の話

ワンちゃんや猫の口の臭いが気になることはありませんか。ちょっとホッペをめくって見てみましょう。

この子は白い歯ときれいな歯肉をしています。いつまでもこの状態を保つために歯の手入れをがんばりましょう。

この子は歯の表面を歯肉が覆ってしまっています。歯肉との境目は歯垢がたまり歯肉炎が起きてしまっています。 5~6歳以上のワンちゃんは程度の差こそあれ、このような状態になっていることが多いです。

先ほどのワンちゃんの顔を見てみると、向かって左側の頬が腫れ上がっています。これは歯の根が化膿して目の下に膿がたまってしまった状態です。

こうなると抜歯が必要となります。単純な抜歯ではなく手術が必要となることもあります。 奥歯の周囲の骨を削り、歯肉を縫合してあります。
歯周病菌は歯をダメにするだけでなく、周りの骨を溶かして、鼻と口がつながってしまったり、菌血症を起こして、腎臓や他の臓器に影響を与えることがあります。

グラグラになった歯を抜歯して見てみると、歯の根の周囲まで歯石がこびり付いているのがわかります。

これは我が目を疑った症例でした。

麻酔をかけて、歯垢や歯に絡まっていた毛をとってみると鼻の中が丸見えになっていました。 本来あるはずの上顎の骨が溶けてしまってないのです。

ダメな歯は何の抵抗もなく抜けました。歯槽骨は全くなく、鼻の中と全周囲つながっており、硬口蓋(口の天井部分)だけが残りました。
頬の粘膜と硬口蓋とを縫合して、鼻と口の穴は何とかふさぎ手術を終えることができましたが、支えの殆んど失った上あごは不安定でした。

こんなになってしまうことはめったにあることではありませんが、口腔内のケアの大切さを改めて感じさせられました。

ほんとに怖い歯の話でした。